不動産所得・家賃収入の確定申告 Q&A
お答えします
開業届は、貸付けを始めた年の確定申告期限までに出せば期限内です。先に閉じるのは青色申告の承認申請で、こちらは開業日から2か月。物件を買っただけの段階は、まだ業務の開始にあたりません。
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一解説
所得税法229条は、届出の期限を「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」と定めています。確定申告期限は翌年3月15日です(同法120条1項)。5月に貸付けを始めた方であれば、翌年3月15日までに開業届を出せば期限内です。
青色申告の承認申請は、これより早く閉じます。144条は、その年の1月16日以後に業務を開始した場合の期限を「その業務を開始した日から二月以内」としています。タックスアンサー No.2070 も「新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合」を並べて挙げており、貸付けの開始が起算点です。5月に始めた方の締切は7月になります。
青色申告をするのであれば、開業届と青色申告承認申請は一緒に出しておきます。守るべき締切は、近いほうの2か月です。
144条の起算点は「業務を開始した日」です。この日は、開業届の開業日欄に自分で記入します。書いた日付が、そのまま承認申請の締切になります。
所得税基本通達143-1は、143条の「業務を行なう居住者」を「不動産所得の基因となる資産を貸付け……をしている居住者」と説明しています。貸付けを始めていることが前提ですので、物件を買っただけの段階は、まだ業務の開始にあたりません。
裏づけになる記録は、契約の側に残ります。最初の入居者との賃貸借契約書、管理会社との管理委託契約、家賃の初回入金明細が該当します。
賃貸を始めるまでには、日付がいくつも並びます。売買契約を結んだ日、物件の引渡しを受けた日、リフォームを終えた日、募集を始めた日、最初の入居者と賃貸借契約を結んだ日、家賃が入り始めた日です。
開業日として置きやすいのは、賃貸借契約が始まり、貸付けを開始した日です。契約書に日付が残りますし、そこから先の管理費や修繕費が業務のための支出だと説明しやすくなります。
引渡しを受けた日を開業日にすると、募集に時間がかかった分だけ、承認申請に使える期間が短くなってしまいます。空室のまま募集していた期間の費用は、開業後であれば必要経費として扱えます。
所得税法施行令7条1項1号は、開業費を「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用」と定めています。貸付けを始める前の物件調査の交通費や、賃貸経営を学ぶための費用などが該当します。
同項の柱書は、開業費から「資産の取得に要した金額とされるべき費用」を除いています。建物や設備の代金、取得に伴って支払った費用はこれにあたりますので、建物の取得価額で、各年の減価償却費として配分します。
柱書はあわせて前払費用も除いています。火災保険料を数年分まとめて払っている場合、まだ期間の経過していない部分は前払費用ですので、その期間が来た年の必要経費になります。
青色事業専従者給与は、生計を一にする配偶者やその他の親族で、専らその事業に従事している人に払った給与を必要経費に入れる扱いです(タックスアンサー No.2075)。対象が事業に従事する親族に限られていますので、貸付けが事業として行われているかどうかで使えるかが決まります。届出書の期限は青色申告承認申請と同じで、その年の3月15日まで、1月16日以後に事業を開始した場合はその日から2か月以内です(所得税法57条2項)。
建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模かどうかで判定されます。貸間・アパートは独立した室数がおおむね10以上、独立家屋はおおむね5棟以上であれば、特に反証がない限り事業として扱われます。賃貸料の収入の状況や貸付資産の管理の状況からみて、これらに準ずる事情があると認められる場合も同じです(所得税基本通達26-9)。
開業届と青色申告承認申請は、貸付けを始めたときに、規模にかかわらず期限のとおり出しておきます。
二一次情報
所得税法 第57条第2項(青色事業専従者給与に関する書類の提出期限)(抜粋)
2 その年分以後の各年分の所得税につき前項の規定の適用を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同項の事業を開始した場合には、その事業を開始した日から二月以内)に、青色事業専従者の氏名、その職務の内容及び給与の金額並びにその給与の支給期その他財務省令で定める事項を記載した書類を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第120条第1項(確定所得申告)(抜粋)
第百二十条 居住者は、その年分の総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額が第二章第四節(所得控除)の規定による雑損控除その他の控除の額の合計額を超える場合において、当該総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額からこれらの控除の額を第八十七条第二項(所得控除の順序)の規定に準じて控除した後の金額をそれぞれ課税総所得金額、課税退職所得金額又は課税山林所得金額とみなして第八十九条(税率)の規定を適用して計算した場合の所得税の額の合計額が配当控除の額を超えるとき(第三号に掲げる所得税の額の計算上控除しきれなかつた外国税額控除の額がある場合、第四号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた同号に規定する源泉徴収税額がある場合又は第五号に掲げる金額の計算上控除しきれなかつた予納税額がある場合を除く。)は、第百二十三条第一項(確定損失申告)の規定による申告書を提出する場合を除き、第三期(その年の翌年二月十六日から三月十五日までの期間をいう。以下この節において同じ。)において、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない。
所得税法 第143条(青色申告)
第百四十三条 不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者は、納税地の所轄税務署長の承認を受けた場合には、確定申告書及び当該申告書に係る修正申告書を青色の申告書により提出することができる。
所得税法 第144条(青色申告の承認の申請)
第百四十四条 その年分以後の各年分の所得税につき前条の承認を受けようとする居住者は、その年三月十五日まで(その年一月十六日以後新たに同条に規定する業務を開始した場合には、その業務を開始した日から二月以内)に、当該業務に係る所得の種類その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
所得税法 第229条(開業等の届出)
第二百二十九条 居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し、若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。
所得税法施行令 第7条第1項第1号(繰延資産の範囲・開業費)(抜粋)
第七条 法第二条第一項第二十号(繰延資産の意義)に規定する政令で定める費用は、個人が支出する費用(資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用を除く。)のうち次に掲げるものとする。
一 開業費(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。)
所得税基本通達 26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)
26-9 建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で建物の貸付けを行っているかどうかにより判定すべきであるが、次に掲げる事実のいずれか一に該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
法第27条《事業所得》関係
所得税基本通達 143-1(業務を行う居住者)
143-1 法第143条に規定する「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行なう居住者」とは、不動産所得の基因となる資産を貸付け(地上権の設定その他他人に当該資産を使用させることを含む。)、事業所得を生ずべき事業を経営し、又は山林を保有している居住者をいうことに留意する。
国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度(抜粋)
青色申告をすることができる方は、不動産所得、事業所得、山林所得のある方です。
(1)原則
新たに青色申告の申請をする方は、青色申告をしようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
(2)新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)
業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
(3)相続により業務を承継した場合
その年の1月16日以後に業務を承継した場合は、業務を承継した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出してください。
国税庁 タックスアンサー No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(抜粋)
納税者と生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、納税者がこれらの人に給与を支払うことがあります。これらの給与は原則として必要経費にはなりませんが、次のような特別の取扱いが認められています。
(1)青色申告者に係る「青色事業専従者給与」
青色申告の方は、生計を一にする配偶者やその他の親族(15歳未満の人を除きます。)で、専らその事業に従事している人に給与を支払っている場合、その支払った金額のうち、相当であると認められる金額を必要経費とすることができます。
(2)白色申告者に係る「事業専従者控除額」
白色申告の場合、生計を一にする配偶者やその他の親族に支払った給与等を必要経費に算入することができませんが、これらの方が専ら事業に従事している場合には、事業専従者控除として、配偶者は最高 86 万円、15 歳以上のその他の親族は最高 50 万円を必要経費として差し引くことができます。
国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など(抜粋)
個人が新たに事業を始めたときの所得税、源泉所得税、消費税に関する届出書等とその提出期限
所得税
個人事業の開廃業等届出書事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告承認申請書原則、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日から2月以内。)
青色事業専従者給与に関する届出書青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業した場合や新たに事業専従者を有することとなった場合には、その日から2か月以内)
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書次の事由が生じた日の属する年分の確定申告期限まで
源泉所得税
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書随時(原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。)。
消費税
消費税課税事業者選択届出書適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その課税期間中)
消費税簡易課税制度選択届出書原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(選択しようとする課税期間が事業を開始した日の属する課税期間等である場合には、その課税期間中)
適格請求書発行事業者の登録申請書(国内事業者用)事業を開始した日の属する課税期間等の初日から登録を受けようとする場合には、その課税期間中
なお、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署等にも届出書等の提出が必要となる場合もありますので、各行政機関へご確認ください。
※引用は原文のままです。読みやすさのため改行位置を調整し、一部を抜粋している箇所があります(編集・加工を行った部分)。最新の内容は必ず出典元のページでご確認ください。
三不動産所得・家賃収入の場合
開業日を物件の引渡日として書くと、青色申告承認申請の2か月がその日から動き出します。入居者が決まるまでに数か月かかることもあり、貸付けが始まる前に締切が過ぎてしまいます。引渡し・募集開始・入居のどこを取るかで締切が動きますので、貸付けを開始したのがいつかを、賃貸借契約書で確かめてから決めることになります。
もう一つは、貸付けの規模です。青色事業専従者給与のように、事業として行われていることを条件にした扱いがあります。判定の目安は独立した室数がおおむね10以上、独立家屋がおおむね5棟以上ですので、一室から少しずつ増やしていく方は、どこでこの線を越えるかを見ておくと、使える扱いが増える時期を読めます。
※実際の取扱いは業態・契約・実態により異なります。個別の判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。
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